ダメなのは知ってるけど

ささくれ千切っちゃったりする

漫画などによく登場する「わかる素人」が俺を苦しめる

 

 

漫画やドラマ、映画など物語作品の人物で、彼等はよく登場する

グルメや音楽、絵画などあらゆるジャンルを題材とする物語作品で重宝される役柄なのだ

彼等は  

      よく知らないけど~  

      初めてなんだけど~  

などと素人であることをしっかり表明してから「わかる」

 

彼等を一番見るのはやはりグルメものだろうか?

 

 へぇー今までワインなんて美味しいと思ったことなかったんだけど、

 これなら私でもわかる。なんて美味しいの!!

だの

 よく知らないけど、あの蕎麦とこの蕎麦、まったく違うわ!

だの

 

素人をハッとさせて、玄人を唸らせ、主人公の大逆転だ

素人でも良いものはちゃんと判別できるのだ

素人でもわかるものが提供されるのだ

 

こんなシーンは必ずと言っていいほど、うんちく物語作品にはあるはずだ

登場する彼等は素人だ。天才料理人やそのライバル、批評家達とは違う

門外漢であり、市井の人、そう私達と同じく

彼等はきっとストーリー上でも便利な存在で、読者は感情移入できる対象であるのだろう

そして彼等は天才料理人や天才ソムリエが作ったり選んだりした逸品を美味しく頂くのだ

美味いぞ!初めて美味しさがわかったぞ!と、ダメな食べ物との違いを語ってみせる

彼等には「わかった」のだ。その料理、その絵画、その音楽、その価値が明確に!

 

そういった漫画作品を読むと、こうなる

美味そうだ。ぜひ食べてみたい。そして俺も「わかりたい」

ワインの味や絵の良さが「わからない」俺だけど、同じ素人の彼等と、同じ興奮をしたい。観て食べて飲んで感激してみたいんだ。

今までも絵やワインには軽く触れたことがあるんだけれど

たまたま良くない物に触れてたから、たまたま「わからなかった」だけ

でも、今はあるじゃん。わかるきっかけが、ここに、銘柄も書いてある。これを買えばわかるんだ。俺も

 

料理や、絵は、ハードルが高いが、ワインなら

そう、あるんですよ!漫画に載っていたのと、まったく同じのが、近所の酒屋に

3000円も出しさえすれば、すぐにでも

 

わくわくしながら飲んでみる

ごくり。うーん。ごくり。チーズと一緒に。ごくり。うーん?

 

そのワインは、本物を知ってほしい醸造家が、大手メーカーが入れる保存料やなんかを入れずに、頑張って安く造った物で、天才ソムリエもこの値段で?!と驚き、ワイン嫌いの助手が、マニアになるきっかけであり、誰にでも「わかる」ものなのだ

普段ビールしか飲まないおっちゃんも、これならたまには買ってみてもいいかな?と思わせた。誰にでも、美味しさが「わかる」ワイン

そう、これなら、誰にだって「わかる」わー!と軽そうなOLがのたまった品

たまたま試飲した主婦、ワインを毛嫌いする大学生も「わかった」

誰にでも「わかる」と、いうことの為にだけ、連れてこられた「わかってない」代表のような彼等が

言う。誰でもわかると

彼等はみんな一口飲めば「わかった」のだ

 

そうなると俺「わからない」わけにはいかないじゃない?

自分は、とんでもない味オンチで、まったく芸術のわからん駄目人間なのか?

そうなのか?いや違う 違うはずだ。そうだ。絶対

うん、今回は、たまたまさ、好みってのもあるし

 

とりあえず訳知り顔で、漫画で見たうんちくでも語りながら飲むことにする

よくわからんけど、美味いんだよ!美味いはずなんだよ。これは美味いワインなんだ!

最近の新世界ワインは、値段も安いし~~

あー結局500円ぐらいの安いやつを炭酸で割るのが最高だな。飲みやすい。

5大シャトーの~~~~ボルドー~~~ブルゴーニュがね~~~はっはっは~~

飲んだだけで、産地がわかるとかってマジかよ。信じらんね

 

おっさんになると未知の興奮や経験に出会いにくくなる

でも、そういうものって、いつだって欲しい

だから、こっちから探してやる

漫画や映画はいいヒントだ。興味を持ついいきっかけになる

いろんなジャンルを試してみる。今まで興味がなかったものにも

 

そうするといつも彼等に出会う 

 

 この音!全然違う!すばらしい!私、音楽なんてなんでも良いって思ってたけど・・

 天然ものと養殖ものとで、こんなに差があるなんて!!今までまずいと思っていたのは養殖だったのね!!

 

ほんとにみんなわかってるのか!!!!

 

 

俺はわかんねーよ

 

 

神の雫(1) (モーニングコミックス)

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